2006年05月22日

text by ライター雨宮まみ
「至る所にある「エロの壁」。たたっ壊せ!と言いたいわけじゃなくて・・・・・・の巻  増刊|雨宮まみ・・・・連載第7回」

 こないだ合コンめいた飲み会に行ったら、女2対男5にもかかわらず、全くもってモテなかった。私が30台まであとひと足の年齢であることや、初対面の人間が裸足で逃げ出すコワモテであることなど色々と自省すべき点はあるのだが、実は原因はそれだけではなかった。私の職業が「エロ本のライター」であることが、この場の面々には事前に知れ渡っていたのである。集まった人たちは、いわゆる「普通の」サラリーマンで
あった。

 前にも「普通の」サラリーマンの人たちと飲んだことがあったがその時は「女でこ
ういうのやってて困ることない?」「彼氏は知ってるの?」「AVって、見てエロいっ
て思う?」などなど素直にいろいろ聞いてくれ、私も普通にしていられた。けれど今
回は何か空気が違う。誰も私の仕事について触れようともしないし、それ以外のこと
もあまり聞こうとしない。いわゆるドン引き状態である。私はこないだバラエティ番
組に出ていた及川奈央のことを思い出した。及川は他の出演者(お笑い芸人やさとう
珠緒など)から、年下にもかかわらず「及川さん」呼ばわりされていた。年下なのに
さん付け。近年まれに見る「腫れ物」扱いである。私はあの時の及川奈央の気持ちが
わかる気がしてきた。たとえこの場にいたのが私ではなく、若くて美人の及川奈央だっ
たらどうか。盛り上がっていただろうか。私には、そうは思えない。さん付けとは言
わないまでも「誰が口火を切るんだ?」的な目くばせが横行するか、もしくは「AV
女優なんだからきっとスケベでテクもいいんだろう」的な下心を持つ男に色目を使わ
れるか、どっちかであろう。まぁ色目を使われたら合コンは勝ちなんだろうけど。
 
 
 
 一月ほど前に、ハマジムというビデオメーカーのことをネット上で書いた。http://www.fastwave.gr.jp/diarysrv/addict/200502b.html#20050213


   ハマジムというメーカーは、いわゆる一般的なAVとは少し違う感触のAVを出しているメー
カーである。全国の、自らAVに出たいと志願してきた素人女を撮りに全国をハメ撮
り行脚するシリーズや、在日韓国人・中国人のAV女優と男優がセックスしたり自分
の出自を語ったりする作品や、UFOが現れるという町・羽咋市にAV女優を連れて
いき、セックスしながらUFOの出現を待つ作品や、巨乳女優が乳をバッフンバッフ
ン揺らしながらアテネオリンピックのフルマラソンを走り、なおかつセックスすると
いう作品など、こうやってあらすじだけを書いてもなかなかうまく良さが伝えられな
い作品が多い。私自身は、特に一番頭に書いた全国素人娘ハメ撮りシリーズの
「Auction02」という作品はエロさもその他の部分の内容の良さも含めて昨年最も
感動し、なおかつ興奮した作品なのだが、それをAV誌で書くことに大きな違和感を
感じていた。
 
 

 エロいし、抜き目的で買った人にも十分楽しんでもらえる作品だと言う自信はあっ
た。これだけエロいんですよ、ということを書いて、アピールするのがエロ本の手法
としては、正しい。ただこの作品の本当の良さは、エロだけではないのである。しか
もその良さが、エロから離れていない。いわゆる「抜けないけれど面白い」という作
品とは違うのだ。エロでしか成立し得ない作品で、AVだからこそ生まれた作品で、
ちゃんとエロの部分を大切に撮ってあって、なおかつ心が揺さぶられる。こう言ったっ
て多くの人は意味がわからないだろう。AVで「感動した」って言われても、それっ
て何? って思うだろう。当たり前のことだが、感動するためにAVを買ってる人は
少ない。「エロ以外の部分もいいんだ」と熱く語られたって、「エロ以外の部分なん
かいらねえからカラミを多く入れろよ」と言われるのが関の山ってものだろう。
 
 

 ハマジムの作品は、セックスを含めた人間を撮るセックスドキュメンタリーである。
AVを普段見ない人でも、きっと面白いと思える作品だろう。それを「AV」として
しか紹介できない、抜きを一番に求めている人に紹介するしかない、というのは、あ
る意味矛盾である。抜ける要素以外のものはいらない、と思っている人にはよけいな
ことかもしれないし、普段AV見ないけど面白いものがあるなら見たい、という人に
は、AV誌に書いてある情報は伝わらない。「もう、ハマジム、AVじゃなくていい
じゃないか」という意見も多い。AVであるということが足枷になり、伝わるべきと
ころに伝わらないんじゃないか、という意味である。
 ハマジムのAVが、AVかどうかなんて私はどうだっていい。AVじゃないって言
えば売れるんなら、多くの人が見るのなら、別にそれでいい。だけど、これは、AV
じゃなきゃ生まれなかったものだ。AVは自由で、何でもできるし、セックスをその
まんま撮れる唯一のメディアで、だからこそできた作品なのだ。
 AVなんて自分には関係ないと思ってる人、AVを見ていても、AV女優とは絶対
つきあえないと思っている人、AVを見ているような女が合コン来たら最悪だと思っ
ている人、抜きやすいAV以外作るなよと思ってる人、AV監督なんてセックスのこ
としか考えてないと思ってる人、自分は普通だから、AVの世界なんて無関係だと思っ
ている人。そういう人のことを、私は否定しない。これからもドン引きして私のこと
を、避けてくれ。面と向かって非難してくれても、親が泣くとか言ってくれても、か
まわない。そういう壁は、あっていいのだ。AVなんてくだらないと思い、AVなん
て自分には関係ないと思っている人間を振り向かせるAVを作るべきだし、そういう
人間にAVを見せてしまうような文章を、書くべきだと思う。そのことの答えが「A
Vという呼称をやめる」ということなら、それでもかまわない。私は、ハマジムはそ
のリスクも想定した上で自らAVの看板を掲げ、AVの壁を壊そうとしたのだと思う。
私も、エロライターと名乗ったままでモテたい。エロライターのままでマンション、
買いたい。その日を夢見て、壁に体当たりをし続けたいと思う。


「増刊 綾乃梓」DMM6月号増刊 より転載。 出版元・(株)GOT

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